とめはね! 鈴里高校書道部【漫画レビュー】

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カナダからの帰国子女でありながら祖母の手紙で綺麗な字を知っていた縁と、女子柔道の強者だけど実は女らしい綺麗な字を書きたかった望月が、高校の書道部に入り、書について学びそして上達していく漫画です。書道部を取り上げた漫画は珍しく、作品としてもちょっと古くて連載は2007〜2015年です。久しぶりに全巻読み返して楽しめたのでレビューしておきます。

書籍情報

漫画:河合克敏
出版:小学館 ヤングサンデーコミックス
ジャンル:部活、書道
既刊:全14巻
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主要登場人物 

大江 縁  がっかり帰国子女、ガチャピン
望月 結希 柔道部 兼 書道部、お出かけはちょっと良いジャージ

レビュー&感想

私の記憶にある小学校の習字の授業では、墨汁が禁止で最初の30分位はひたすら墨を擦らされていました。そしてわずかな残り時間でとにかく書く。書いたら先生に朱で×をもらうだけ。それですっかり習字は嫌いになりました。

さらに最近は文を書くのは基本的にコンピュータ上で直接文字を書くこと自体が減ってしまい、たまに書くと自分の名前でさえもとんでもなく下手で呆れてしまいますが、やっぱり綺麗な字が書ける人を見ると尊敬してしまいます。

ただし書道においては、一般的に言われる読みやすい教科書的な字に価値がある訳ではなく、書としての綺麗な文字、流れる繋がりの良さ、勢いや躍動感などのアートとしての価値が求められるもののようです。

漢字、かな、漢字かな交じり、大字、前衛とそんなジャンルに別れていることも、この漫画で知りました。素人から見ると読みにくいとしか思えない崩れた字の意味とかも。

そのような書に関する様々なことについて、書体の成り立ちや有名な書家などの歴史的背景も含めて、沢山の解説をしてくれて学びが非常に多い漫画です。日本人として知っておいて損はない知識でしょう。

漫画の中で出てくる書の作品は、当時の実在の書道部の高校生を含めて、いずれも実際に書道に関与している方々の作品をそのまま用いています。最近の漫画では『ブルーピリオド』が同様に実際に描かれた作品を漫画の中に用いていますね。

お話の始まりとしては、鈴里高校書道部は日野、加茂、三輪の女性三人のみでしたが、入学したばかりの縁が半分脅迫されるようにして入部させられます。部員が足りず廃部間近の状況に、素質のありそうな新人をやや卑怯な手段を用いて獲得するのは部活漫画での定番の始まり方ですw

さらに、たまたま縁の右腕を怪我させてしまった高一ながら女子柔道全国二位の望月が、やはり騙されるようにして柔道部と兼部で入部することになります。書で縁には負けないというライバル心を燃やしながら。

帰国子女のイメージとはかけ離れたちょっとなよっとした弱めな男子の縁と、のちに女子柔道で日本代表になってしまうくらいの強さをもつ望月の性格の対比は最後までそのままです。

望月以外にも登場する女子達は、比較的性格が強めに描かれています。加茂は身長175cmの元ヤンですし、三輪は口八丁で先生を言い負かすくらいのずる賢いタイプ。日野部長は優しそうですが、ライバル校の鵠沼学園の書道部部長である日野の双子の妹のよしみは、姉とは正反対で性格の悪い設定です。

8巻頃で新年度になって入部する新1年生の女子も、望月の女子柔道部の元気な後輩の羽生と、よりアートに近い前衛書に強いこだわりを持つ島という性格がキツい感じの二人でした。

さらに後で出てくる「書の甲子園」で文部大臣賞を取っている大槻は、最初の頃は男性恐怖症の設定でしたが、後半では京女のステレオタイプのような陰険さ(ツンデレ入り)を発揮してます。唯一、鵠沼学園の副部長の見城さんのおしとやかさだけが清涼剤ですかね。

一方の男子は、縁の恋のライバルの豊後高校の一条くんも体力無しの文系男子ですし、鈴里高校の顧問の景山も中国史オタクでちょっと抜けている設定なので、あえてそういう強弱な男女の対比を作ったように感じます。

そういう負けん気の強い女の子の代表としての望月は、字に力強さと勢いがあるので、大きな紙に大きな文字を書く大字書が得意というのも上手く設定されていたと思います。彼女が最後まで柔道と書道の二つを諦めなかったのは、作品に一本強い筋が通っていたようで好感が持てます。

特に書の甲子園への出品作品を書き上げた最後の方で、書の大家で指導をしてくれていた三浦先生に、楷書がここまで書けたらどこへ行っても自分は書を学んでいたと胸を張って言える、と言ってもらえて泣けたシーンは凄く良かったです。

漫画なので最終的には、みなどんどん上達し「書の甲子園」で全員が賞を取るまでになります。そこに時には望月や縁の周りでの高校生らしい恋心も上手く絡めながらと、部活漫画としてとても正しい作りがされているので、読んでいて多くの学びがありながらかつ楽しい作品です。

おすすめ!

「書」という芸術について知ってみたい方
文化部として真面目な部活動をする漫画を読んでみたい方に

最新刊

全14巻です。

参照作品

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