二月の勝者 ー絶対合格の教室ー【漫画レビュー】

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子供が中学受験で合格を勝ち取ったならば、それは親の経済力と狂気のおかげだと言い切って始まる漫画ですが、実際そうなんだと思わせるようなストーリーが展開します。高額な塾費用であってもゲームで課金してお気に入りのキャラを育てるのと何が違うのかというのは、かなり本質的な問いかけでしょう。中学受験という世界を塾というビジネス側の視点からも見せようとしているのが非常に面白いですね。

書籍情報

漫画:高瀬 志帆
出版:小学館
ジャンル:中学受験、家族
既刊:19巻
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主要登場人物 

佐倉 麻衣 桜花ゼミナール吉祥寺校新人講師
黒木 蔵人 桜花ゼミナール吉祥寺校校長、元フェニックス講師

レビュー&感想

我が家は子供がみんな小学生がのうちに東京を離れることになってしまったので、幸か不幸か家庭として中学を受験するという雰囲気は経験していないのですが、今や都内では4人1人が中学受験をしているそうです。確かに会社には子供の受験を考慮して家族は都内に置いたまま何年も単身赴任をしているという人もいるので、珍しいことでは無いのでしょう。

前半は子供の立場で考えるという主張をする新人の佐倉と、業界のトップ塾から移ってきた超有能な黒木の対立で描かれ、もちろん黒木に分があります。ちょっと昔の漫画のように、既存の価値観を壊す元気な新人が本当に正しいことを示してみせるみたいな甘っちょろい作りでないのは好感度高いです。塾講師は教育者では無くサービス業であるなんて本当にその通りですよね。子供と親のことを考えた上での必要なサービスを提供するのですから。

どちらかというと、子供の気持ちを考えたつもりになっている親達を滑稽に、または逆にとても真面目に描くことで、中学受験とそれを支える塾業界とは何かを語っています。前者で言えば子供の実力や希望を無視して自分が良いと思う学校しか考えていない親とか、片方だけが受験に熱心な夫婦とかは典型的です。

受験というか学校選びについても様々な視点があることが示されます。好ましい選択をするために競争に勝つ必要があるのは当然なのですが、競争の結果というものが存在するがゆえに、それでマウントを取り出すような人たちがいるのが諸悪の根源なのでしょう。もちろん話の中ではそういう親達にまつわるまさに狂気と言うしかないトラブルが「あるある」として、そして十分まともだけれども葛藤する沢山の親たちにも触れられていきます。

いずれにしても子供のためにと考えてあげることは親の当然の責務でもあるので、その想い自体は否定せずに、あんな親こんな親いるよね、あなたはどう思う?という問いかけに新人の佐倉を通して考えさせている作りになっています。黒木のように高い所から言うだけでは無く、桂先生の諭すような説明も加わって良い感じです。

サービス業としての塾が、そのような親たちにどう対応して行くかというビジネスの視点からすると、黒木のやり方はとても納得がいくものです。塾というものを受験にしか役立たない詰め込み学習をする所とうがった見方をしている方には、かなり目からうろこになる話も出てきますよ。

受験という家庭の一大プロジェクトに対するマネジメントがどうあるべきかの視点も、なるほどと勉強になります。今の我が家のように、ほぼ公立校しか無い地域での高校や大学の受験生を持つ家庭にとっても意外と有用ではないですかね。

最初の頃にあえて酷く描写されていたように黒木が売上げ第一主義かといえばそうでは無く、話が進むにつれて周りに見せていない塾の外でのもう一つの顔が、そして過去の大きな傷が明らかになってきます。社会的なテーマでもある子供の貧困とかも上手く取り込んでいます。

実際に自分が親になってみると、子供には将来こうなってもらいたい、そのためにもっと良い学校行ってもらいたいと「子供のために」という枕詞を持つ親のエゴを抑えるのはかなり大変です。ゲームやYouTubeの視聴ばかりをしていれば小言も言いたくなります。そんな親としての自分自身を客観的に見て反省するのにも役立つ漫画です。

おすすめ!

子供の将来を心配する親御さんには是非!
中学受験やそれを支える塾とはどんなものかを知ってみたい方にも

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