AIの遺伝子 Blue Age【漫画レビュー】

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2175年においてAIが当たり前になった世界で、人間とAIとの色々な関わり方を描いている漫画です。SF好きとしてはAIの進歩には期待していますが、優れたAIと十分なユーザーインターフェースがあれば、人間の心をコントールさえしてしまうかもしれないという話は怖いですね。ただしAIの暴走のようなパニック的なお話では無く、我々の日常に高度なAIがあった時の様々な課題や考え方を扱っているので、話題が身近で考えさせられることがあり面白い作品です。

書籍情報

漫画:山田胡瓜
出版:秋田書店 少年チャンピオンコミックス
ジャンル:SF、医療
既刊:6巻
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主要登場人物 

須堂 光  ヒューマノイド科の研修医
中野 由香 健康福祉士(心の問題も扱う理学療法士のような職?)

レビュー&感想

同じ作者のAIの遺伝子シリーズ『AIの遺伝子(全8巻)』『AIの遺伝子 RED QUEEN(全5巻)』に続く3作目で、主人公の須堂の研修医時代を描きます。

研修医とは言っても今から150年後の未来のお話なので医療自体も様変わりしています。須堂の所属からして現代には無いヒューマノイド科です。

ヒューマノイドは頭脳がAIで体は人体の生命体で、AIの進化と培養による生体組織の量産が可能になった未来において成立している生命体です。

漫画の舞台の時代では既に人間と同様な権利も与えられていて、設定によると日本の人口の10%はヒューマノイドとなっています。

AI(昔風に言えばコンピュータ)と人間の関わりを扱うSFは昔から沢山ありますが、頭脳だけAIで体は生命体、つまり人と同じように寿命という概念を持たされているヒューマノイドという存在は特に面白い設定です。

たとえば自立学習に優れるAIを頭脳に持つはずのヒューマノイドなのに、人間以上に学んで進化してしまうことが制限されているとか、最悪事故や病気で体を失っても新しい体に乗り換えられるとか、なんと子供も作る事も出来たりします。

この辺りは科学的な実現性よりも、法的・倫理的にどのような社会になっているのかの方が気になりますし、実際に作品としてもそちらを重視している感じはありますね。

このようなヒューマノイドと人との差を扱った物語をはじめとして、この漫画では、社会システム全般を支えるより高度なAIや、AIで動いてはいるが各種制限があるロボット(産業AI)等と人との交わり方とそこに現れる課題を描いています。

昨今でもそんな心配をあげる人がいますが、あらゆる判断や行動がAIに指示される/された側もそれを信じるという社会通念があると、医者さえAIの判断の方を信じるという状況が生まれています。

実際に今の社会でもAIによる病気の診断でも車の自動運転でも、間違った時に誰が責任を取るのかが課題になっていますが、この漫画のようにAIの有用性が十分に認められる社会になってしまえば、人はAIと違う判断をした時に求められる責任の方を恐れるようになってしまうというのはなるほどですね。

また、ヒューマノイド固有の特性としてVRネットワークへの接続しやすさがあるとされていて、安易にアングラなネットワークに接続してウィルス感染なんて映画のマトリックスみたいなお話もあります。

そのような感じで十分に信用できるAIがある世界を舞台に、そこで生じるであろう各種の課題を描いている漫画ですが、さすが同テーマでの3作目で作者の発想もこなれてきているのか、このシリーズでは上手い視点だなと感じるエピソードも増えていて面白いですよ。

おすすめ!

AIが実用になっている世界を夢みる方に
生命とは自我とは、その選択の正しさとはのような哲学的な話題が好きな方にも

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参照作品

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