秋晴れの空の下の遊宴会で、魔物を喰らう「悪食令嬢」と常に血臭を求めて魔獣を屠る「狂血公爵」は出会います。お互いに周りからは二つ名で呼ばれ距離をとられる曰く付きのふたり。変わり者同士だからでしょうか、それとも運命の導きでしょうか。しかし考えてみれば、似た嗜好を持つふたりがくっつくなんて普通のことかもしれません。
レビュー&感想
メルフィエラにとって魔物とは、かつて伯爵領の領民の飢餓を救った母の研究を継ぐために、どう食料にするかを考えるもの。一方のアリスティードにとっては、自身の公爵領の大森林で湧き続ける邪魔者で、増えて魔毒が蔓延するのを防ぐために常に狩らねばならぬもの。
なら、次々と湧いてくる魔物を狩って、次々に料理して食べてしまえば一石二鳥。実はこれって両者で結婚して公爵領に住めばWin-Winじゃないか? ということにふたりが気づくのに時間はかかりませんでした。
もちろんそんな条件だけでくっついたのでは無く、お互いに惹かれ合っている描写は何度も描かれます。ふわふわの赤い髪に触れながら愛をささやく公爵はイイ男過ぎです。
漫画としてちょっと残念なのは、せっかくの魔物食が普通の食べ物にしか見えず、たとえられる通常の食材さえも異世界のものなので、味の想像が全く出来ないところでしょうか。
この点、魔物食の先駆者である『ダンジョン飯』では、出来た料理の見た目はともかく、その存在や手に入れる経緯も含めて絶対不味そうだと考える仲間の描写が先にあるので、ゲロ不味だった時にも、意外に美味しかった時にも読み手の共感を得やすいですね。
メルフィエラの食べたいがための珍しい魔物好きに、優しい彼氏が望みを叶えてくれてしまう形なので、典型的な破れ鍋に綴じ蓋ではあるのですが、ふたり合わせてこいつらヤベぇ感がもっとあっても良いのかもしれません。
また本作の通常の令嬢系作品との明確な違いは、メルフィエラの周りには騎士はいても侍女がいないことです。引っ越しの時にメイドさんがコマの端に描かれていただけでした。
変わり者として描写するためにあえて女性を置くことを避けたのかもしれませんが、濃い目のサブキャラを好む私としては、公爵領に着いてからでも誰か出てきてくれることを期待します。
アリスティードの側には、家令のケイオスや実の兄弟である国王がいて、けしかける役目を果たしていますので。
単に魔物を食べ続けているだけでは早々にネタが尽きてしまう恐れがあるので、ありきたりですが悪食のおかげで王国の難題を解決するとか、絶体絶命になったけれど悪食のおかげで助かるというような、新しい展開を期待しています。
姫様の願いを叶えるイケメンが好きな方
自分だけが彼女を理解できるという関係性に萌える方に