一方は一つ屋根の下で同居することになった一つ上の先輩。もう一方は気心の知れた常に距離が近い同級生。そして色恋にも目が行きつつもバドミントンに打ち込みインターハイを目指す主人公。3人の恋心と努力と葛藤がそれぞれに描写される、青春という言葉が相応しい時期のお話です。
レビュー&感想
ラブコメでスポーツを主題に取り上げているものが単純なハーレム系作品より良いのは、なんでこいつがモテているのか分からないという疑問点が浮かびにくいことですね。
ちゃんと主人公がスポーツで活躍するところが描かれるので、時々優しいそぶりを見せるからだけのような陰キャの都合のよい妄想がないですから。もちろん陰キャが陰キャらしくした上でヒロインに好かれている『僕の心のヤバいやつ』のような作品はまた別ですよ
とにかくこの作品は、同居することになってしまった憧れの先輩である千夏と、中学からの良い友人である雛という可愛い女の子が身近にいて「リア充×××!」と言われかねない状況で、青春を過ごすという古き良き時代からの王道ラブコメものとして楽しめます。
千夏が天然な姉属性、雛が元気な妹属性というのも全包囲に配慮されています。また大喜と雛の中学時代からの友人である匡がちゃんと全てを理解したお節介役の役目をこなしていて、こいつもいつか幸せにしてやりたいと読者の期待を誘います。
舞台は、インターハイに何度も選手を出している中高一貫のスポーツ強豪高。登場人物はバド部、バスケ部、新体操部にばらけていますが、それぞれが競技に打ち込み挫折やリカバリするところもしっかり描かれていますし、そこに異性の感情が上手くマッチする場面が作られていて、お話は盛り上がっていきます。
いつも近くにいる異性とどんな関係なんだと勘ぐったり、ちょっとデートをしてみたり、落ち込んでいる時に思いがけず励ましてもらったりと。主人公だけでなく3人それぞれの視点に立って描かれる心情がキラキラして綺麗で眩しいです。
女子二人はお互いが主人公にはお似合いだなと思う応援者でありつつも、多少の嫉妬心から牽制もしてしまうライバルでもあったりして、少女の揺れる想いが錯綜している感じが現れているのが良いですね。
ここまでの見所としては2巻からの雛が自分の気持ちに気づくところと、4巻の同じく雛の可哀想なところでしょうか。でもそれでも正面から攻めて頑張る雛はとても可愛いキャラになっています。
千夏は大喜の自宅に居候して同じ生活空間にいるという最強の盾を持っていますので、そこに雛が攻め続けどこまで善戦できるかは見物です。
と思っていたら、ついに6巻で大喜が雛の気持ちに気づくのを描いてしまいました。それでも3人の関係がくずれずに、しばらくは見応えのある攻守が続くようです。
それと、色恋の話をあまり先に進めてしまうと、IHを目指して頑張るという別の流れを阻害してしまうので、適度なバランスで続くと良いなと思います。
あとは同中仲間の匡はやっぱりイイ奴ポジションなので、いずれ彼が幸せになるサイドストーリーもあると嬉しいですね。
登場人物と同年代の方は友人の恋心を知って応援するかのように。
既に青春が遙か遠くの方はキラキラと光り輝いていたあの時代を妄想(改変)しながら。