『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』の第5話のネタバレ感想です。
ちょっとぼけっとしている内に、Amazon PrimeでもParamaount+の視聴が出来るようになっていました。Prime会員だと追加で月額770円なので、さすがにスタトレのためだけに月額2530円のWOWOWの継続は厳しくなってしまいますね。
また、WOWOWだとCC(英語字幕)が入っておらず原文で何を言っていたのか分からないのが不満でしたが、Amazon Prime Videoだと直ぐに切り替えられるのでより良いですね。ひょっとすると画質を求めるならWOWOWなのかもしれませんが。
今回はスポックのお話で、テーマは「相互理解」という感じになっていて、とてもスタトレらしい話で面白いですよ。原題は”Spock Amok”で、Amokの意味を調べると「混乱」よりも、もうちょっと強い感じで「荒れ狂う」のようなニュアンスのようです。で、後述するようにTOSのエピソードのタイトルとも関連付けられていたりします。
第5話 スポックの混乱
始まりはヴァルカンの結婚式のような場です。トゥプリングの衣装がかなり刺激的です。しかしスポックと向き合った彼女は、彼の耳が地球人のようであることを指摘します。そうするとスポックの顔は髪型や眉の形を含めて如何にも素の地球人な顔になっていました。
トゥプリングは、地球人とは結婚出来ないので「カリフィー」を選ぶと言うのですが、これはTOSの第2シーズン第1話である『バルカン星人の秘密(原題:Amok Time)』で出てくるヴァルカン人における結婚をかけた決闘です。さすがに覚えていないので、ググったり、昭和に買った早川文庫を引っ張り出したりしましたよ。スポックの婚約者はちゃんとこの時からトゥプリングでしたね。
YouTubeで検索した該当話の映像を見ると、周りの石造りの構造物とか、振って鳴らす鈴とか、戦う時の特有の武器であるリルパとか、非常に上手く再構築されています。さすが本家本元です。TOSではトゥプリングに選ばれてしまったカークと戦っていましたが、今回はヴァルカン人の見た目のスポック自身と戦うことになります。
カークの制服が切り裂かれた様子まで再現するかのような戦いで、地球人スポックは負けそうになり、「私は地球人じゃない」と言いながら殺されそうになると、目が覚めて夢オチでした。思わず鏡で自分の耳を確認しながら科学士官日誌の口述記録が始まります。
第1宇宙基地(Starbase 1)に停泊中のエンタープライズの船体にチューブが繋げられますが、ちゃんと前話で貨物船と繋げたチューブが出た場所ですね。ちなみに過去シリーズでStarbase 1が明確に出てきたことは無さそうですが、その番号からしても太陽系にあるそうです。
そこにはトゥプリングもやって来て、休暇を一緒に過ごそうとしますが、スポックには外交の仕事もありました。私は仕事を同僚に託してきたのにとトゥプリングからの皮肉を受けながら、今夜の食事は一緒に出来ると言うのが精一杯のスポックです。
提督から外交の交渉についてのブリーフィングがあり、クリンゴンとロミュランの間に位置しているロンゴヴィア保護領との重要な条約交渉であることが告げられます。交渉相手は太陽光を帆に受けて進むソーラー帆船で来ていて、条約の調印がなされれば相手の旗を揚げる慣習があると説明されますが、ソーラー帆船だけで太陽系まで来るというのはさすがに無理なので、儀式用に引っ張ってきたのでしょう。
すると通信が入ってロンゴヴィアの代表がエンタープライズに乗り込んできてしまい。予定よりも早く外交が始まってしまうことになりました。
そんな中、オルテガス、チャペル、ドクター・ムベンガも休暇に出ようとしています。チャペルは彼氏の話をしていて、TOS時代の描写とは異なり奔放というか今時の女性像という雰囲気です。
転送室ではクルーを送り出すのにウーナとラアンが立ち会っています。休暇も取ろうとしない彼女らを見て、うっかりドクターは、彼女たちには「お楽しみ殺し」原文では、”Where fun gose to die.(楽しいことが死ぬ場所)” という若手士官達からのあだ名があることをバラしてしまいます。もちろん僕はそんなあだ名知りませんよと誤魔化す転送主任のカイルの狼狽ぶりが楽しいです。
トゥプリングが待つ自室に戻り、外交交渉が早く始まってしまったので夕食も同席できないと謝るスポック。トゥプリングは、私は仕事よりあなたとの時間を優先したのにとスポックを詰問します。二人の関係維持よりも仕事を優先するなんて地球人的だと言われるのが辛いですね。言葉は静かでも「私と仕事とどっちが大事なの!」ってやつですよ。
トラブルに対して平静を装って淡々と語るヴァルカン人的なトゥプリングに対して、落ち込む表情を見せる地球人的なスポックの様子が対比して描写され、ここでやっとオープニングです。
早速、彼氏と会っているチャペルですが、彼氏から二人の今後を本気で考えたいなんて言われて困っているところに、独り寂しく食事するスポックをみつけて彼氏の前から逃げ出します。そして勝手に相談にのったうえに「恋人との約束は最優先」とか言って真面目なスポックを煽るのでした。
その結果、スポックはトゥプリングにお互いを正しく理解するために「魂の共有」という行為をすることを提案してしまいます。儀式的にやっていますので、いつもの精神融合とはまた違うものなんですかね。
そしてそれは一瞬で終わってしまったように見えましたが、何かを失敗したようで、スポックとトゥプリングで「私達、入れ替わっている!」という状況が生じてしまいます。トゥプリングは論理的なために元々男性的な口調ではありましたがさらにそれが強く、そしてもちろんスポックは、ちょっとなよっとした女性的な声で高めな口調になっていて、二人の会話が、この手のシチュエーションをよく知っている我々には楽しいです。
会話をしながら、中身はスポックのトゥプリングが右眉を上げてみせるのは上手いですね。私は片眉を上げるという動作は出来ないのですが、俳優さんは練習したりするのでしょうか。
この状況を打ち明けられたパイクが、”Get out of town.” (嘘だろ!という意味の成句)と言ったのに対して、中身がトゥプリングであるスポックが ”We are not in a town.”と返すのは、英語での通常の返しというよりもヴァルカン人だからこその返しなのですかね。
ロンゴヴィアの代表は、スポックが相手でないと交渉しないと言ってきている状況なので、パイクは中身がトゥプリングのスポックを引っ張り出そうとしますが、当然、身体がトゥプリングのスポックは反対します。しかし身体がスポックのトゥプリングは「相互理解のためにはこれは絶好の機会だ」と述べて交渉に出ることを選択するのでした。
さてさて、その裏ではウーナとラアンが自分たちへの失礼なあだ名に憤慨しつつ、仕事こそがお楽しみなんだと言い訳しているところでアラートが鳴り、「エンタープライズ・ビンゴ」と呼ばれている遊びをしている若手士官を捕まえます。どうやら、船内でのちょっとしたいたずらのリストを埋めていく遊びのようですね。
この時、罰として休暇は取り消しでカイルの下で働けと言われた若手が、彼は意地悪だからと嫌がるのですが、はてさてカイルはそんな性格の設定なんでしょうか。転送パッドの清掃とか、とっても指示が細かかったりで。
結局、ウーナとラアンは、若手との「相互理解」のために、このエンタープライズ・ビンゴのリストを入手し、挑戦することにしました。遊びに真面目に取り組む二人のちょっとコミカルな感じが良いです。ちらっと映されたリスト中にはスタトレ定番ネタのトリブルを転送バッファに入れるとかあったのが怖いですけどw
トゥプリングの身体で部屋に残されたスポックですが、こちらもトゥプリングの同僚からトゥプリングとしての仕事を頼まれてしまいます。この時の通信画面のGUIはヴァルカン様式になっているという細かい作りがなされていました。映像がアップになった部分では周りは英語になっていて、さすが23世紀、マルチランゲージどころかマルチインタフェース対応です。
オルテガスとチャペルが、スポックに恋愛アドバイスをしたなんてリルパで殴られるよと話しているところに、中身がスポックであるトゥプリングが話があるとやってきた時の二人の「やっべー」という反応が面白いです。スポックは直ぐにバラしてしまうのですけど。
一方の外交交渉の場に出されたスポックの身体のトゥプリングは、さすがに論理的にそれなりに上手く進めますが、ついちょっと自分の意見を出してしまいます。そこでパイクが割って入ってスポックを称えるようなことを言う、つまりはトゥプリングに対してスポックの立場と価値を説明するということをすると、それ自体が交渉相手のロンゴヴィアの共感を得て、彼らはもう一度チャンスをくれることになるのでした。
この時ですが、スポックの目にはアイキャッチが入ってとてもおめめキラキラになっているのが、実は中身はトゥプリングなんだということを示している感じで良いですね。
さて、トゥプリングの交渉相手である犯罪者のバルジャンは、三次元チェスをしてますよ。こういう細かい原作を忘れない作りが良いですよね。
結局、中身がスポックの人は、とっても地球人的な手法でトゥプリングの仕事を片付けてしまうのですが。
ヴァルカン人達のお仕事が終わったこともあり、医務室でドクターの医療技術によって二人は元通りになりました。精神融合とかも手を顔に合わせれば出来るのだから、電極を通じてカトラを交換というのも確かに不可能では無い気がしますね。『ST3:ミスタースポックを探せ!』ではマッコイからスポックのカトラを抜き出して移すのに神殿とかでえらく神秘的にやっていましたが。
最終的に、スポックとトゥプリングは和解して元の鞘に収まります。そして外交交渉の方は、パイクが相手への共感がキーであることに気づいて対応し、先に説明されていたように、ソーラー帆船には惑星連邦の旗が掲げられることで、交渉が成功したことが示されます。
同時にエンタープライズの船外には、ビンゴのリストの最後にある「焦げ跡」と呼ばれる同船先端の最古の外郭部品にサインをするために、船外服では無くフォースフィールドを使って歩いて行くウーナとラアンがいます。「焦げ跡」には、既に多くのクルーのサインがあり、そこに二人がサインをしたところで、先ほどの惑星連邦の旗を掲げたソーラー帆船がゆっくりとエンタープライズの上をパスしていくという、とてもカッコイイシーンが入ります。
最後はオルテガスとチャペルの二人の会話の中で、チャペルの次の恋を匂わせながらエンディングです。
今回は、外交交渉、スポックとトゥプリングの恋愛関係、上官でもあるウーナとラアンに対する若手士官達との関係という三つの相互理解の話を絡ませながら上手くまとめていましたね。時はずっと未来、場所は宇宙になっても人間同士の関係は大変だ。でも何か解決策はあるものさというような、とてもスタトレらしい話で良かったです。満足しました。
WOWOWオンデマンドには含まれていて、Amazon Prime Videoでは追加契約できるParamaount+で、『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』が視聴出来ます。第1シーズンと第2シーズン、それぞれ10話が配信中です。
Amazon Prime Videoでスター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールドを視る