辞書によると「拷問」というのは自白を強要するために肉体的苦痛を与えることとなっていまして、とすると精神的苦痛を与えるのは違う分類なのかもしれません。ただ日常でも望んでいることに対して耐えがたい我慢をさせられることを「拷問かよ」と表現したりしますよね。この作品は少年漫画ですのでもちろん後者を楽しむものです。
レビュー&感想
偉大なるワンパターンという言葉がありますが、これはワンパターンが芸として昇華していることを賞賛する場合に使われ、この作品も基本その構成で話が進みます。すなわち、
①姫様が今回こそはと虚勢を張る
②美味しそうな料理が運ばれてくる
③姫様が強靱な精神力をフルに使って精一杯あらがう
④拷問官がこれみよがしに美味しそうに試食してみせる
⑤姫様が屈する
⑥みんな幸せ(聖剣エクスを除く)
という基本パターンが繰り返されます。なお料理で無くても拷問として成立するために姫様が望んでいる何かであるという点は一緒です。特に姫様のノリの良さは確実に芸の域ですね。
ワンパターンなので読者はどうなるか分かっているのですが、それまでの描写が秀逸で楽しめます。もちろん結構ひねりも効かされていて、そう来たかーという拷問もあるのでよく考えられているなと思います。それと最後がみんな幸せなのがこの漫画の良いところです。
なのでこの漫画、自分が読むというよりもうちの子が好きなやつじゃないかなと狙って購入したら大当たりでした。
拷問は担当する拷問官毎に得意分野があるので、姫様を堕とすために料理だけで無く様々な「娯楽」が提供されます。いやぁ人間には色々な楽しみが身近にあるんだなと気づかされますね。たださすがに拷問だけでは続かないので、時々別のイベントの話が挟まりますが、これは土日は拷問がお休みだからという設定がちゃんとありました。
週休二日といえば、トーチャーがスキル上達に励むキャリアウーマンのようだったり、拷問官の昇級試験に挑戦する若手がいたり、さらに魔王は話の分かる社長のようだったりと、魔王軍はちょっと会社組織をモチーフにしているようですが、意外とホワイト企業なのがうらやましいです。
その中でも美しくて仕事も出来て、料理を作らせたら絶品で、やさしい心遣いもできるけどちょっとうっかりさんのトーチャーはヤバいです。有能な懐刀キャラが好きな私としては一推しです。料理の回は彼女の最高位拷問官としての技術が光るので、テーマの料理を食べたくなりますよ。
ボケとツッコミのようなワンパターンの漫才芸が好きな方や
ダイエット中でも美味しい料理に手が出てしまうのは人間の性だよねと心に棚を持つ同志に