無愛想なコミュ障である厳は、キャンプギアを厳選してザック一つでどこへでも行けるという自由を好む徒歩キャンパーです。ソロは気楽だが責任もつきまとう、でも楽しみも独り占めなのが良いと思いながら日々ソロキャンプで焚き火を楽しんでいました。ふたりでソロキャンプという理解不能な提案をする雫にうっかり出会ってしまうまでは。
レビュー&感想
初めはタイトルだけ見てなんだこりゃと思ってしばらく手を出していませんでした。『ふたりエッチ』の二番煎じタイトルかなと。でも読んでみれば結構真面目なキャンプ漫画です。
ソロキャンプを楽しんでいた厳がちょっとトイレに行った隙に、焚き火の前で濡れた服を乾かしていた雫。言い訳が腹立たしくも何も準備がない女性を一晩放置するわけにもいかず、寒い夜に自分のテントを貸したあげくに、他人の財布を漁るようなこの酷い女に半分脅される最低な形で、厳はこのふたりソロキャンプに引きずり込まれました。
その概念は、現地集合現地解散、お互いのテントはそれなりに離す、やれることは自分だけで、独りの時間を邪魔しない等々ですが、食事だけは料理が得意な雫が提供するという変なソロキャンプです。とはいえ、単独でひとりソロキャンプ(?)をやってみた時に妙に寂しさを感じたりもする厳でした。
後から出てきますが、お互いのテントが別というのは厳が父親としていたキャンプと同じでした。なので父親が何でもひとりで出来るように自分をしつけてくれていたのと同じように、あくまでもソロキャンプの師匠として雫と一緒にいてやるのだと厳は自分を納得させています。
キャンプ漫画なので、厳はキャンプギアについて語らせると長いという体裁を取り、初心者の雫が教わる形で、その使い方やうんちくにはかなりのページを割いています。
趣味についてのアイテム集めが沼であるというのは何でも共通ですよね。カメラであればレンズ沼とか有名ですし。釣り具であれば『放課後ていぼう日誌』の真が沼にはまっているキャラですね。
その時にギアについて語る厳が言う「一番大事なのは見た目。かっこいいに勝るものはない」については完全同意します。己の所有欲を満たしてこその沼ですよ。機能美もまた良いのですが趣味のアイテムには一目惚れってありますからね。そして後ろめたい浮気もw
一方の雫の方は調理師を目指して専門学校に行っているくらいなので料理は得意です。タンドリーチキン(インド)、シュラスコ(ブラジル)、中華料理、ベトナム料理、スペイン料理、そして居酒屋風にメキシコ料理までと、毎回テーマを決めて厳に「うまぁ〜!!」と叫ばせるキャンプ料理を提供します。
厳がメシは期待していると言えば、雫は美味しそうに食べてくれて作りがいがあると思い、もう彼女に完全に胃袋を捕まれている描写ばかりです。レシピもきちんと紹介されているのでグルメ漫画としても十分成立しています。
ふたりとも酒飲みですので毎回食べて飲んでですが、料理であっても面倒を楽しむという所には原点を感じると、厳は雫への理解を深めて行きます。
そんなこんなで一緒に行動をするふたりは当然そういう関係に近づいていきますが、それをなかなか認めたくなかった厳も、前カノの花夏との再開もあって雫に心を開いていきます。
しかし14歳の差は『ながたんと青と』の男女逆パターンですね。最初はおじさん呼ばわりされているくらいの酷い扱いでしたし。若い方から先に相手に惚れるのは同じですが、そうしないと犯罪になっちゃいますからね。
ただし、やっとお互いの気持ちを確認し合った頃にお邪魔虫が出てくるのはラブコメの定番手法です。星崎が割り込んで来て「さんにんソロキャンプ」とか修羅場が訪れていますが、さてこれからどうなるでしょう。
焚き火とゆっくり語り合うようなストイックなキャンプが好きな方に
キャンプ料理のネタに困った時にも
最新刊
参照作品
『ふたりエッチ (Amazon)』
『放課後ていぼう日誌 (Amazon)』
『ながたんと青と-いちかの料理帖- (Amazon)』