SFと異世界を融合すれば面白いのではの視点で、会話できる体内のナノマシンは精霊のようなもの、見たこともない未来兵器は魔道具、飛行するモンスターは実は高性能ドローンだったのようにして、勇者のお約束のチートを実現するのは、裏に遙かに進んだ科学技術があるからとの説明をしている異世界もの漫画です。
レビュー&感想
設定では地球の数千年後となっているようで、約1000年ほど前よりバグスという人類を捕食する生命体との戦いが続いている世界です。
そんな舞台設定の中でワープ航行中の航宙艦が、突然攻撃を受けてワープアウト。たまたま重力制御の強い区画にいたアランを残して1200名の乗員はいきなり全員死亡となります。
中尉の身ながら生き残りで最上位士官となってしまったアランは、艦のAIの指示で半強制的に艦長にさせられ、さらに既に艦自体が崩壊の危機にあったために未開の惑星(のちにアレスという名が判明)に緊急ポッドで脱出します。
トラックにひかれたり過労死したりしての神様の気まぐれでではありませんが、こうしてアランは事実上の異世界転生をして物語は始まります。
そこからは我々には馴染みのある冒険者の世界ですが、チートな最新武装は持っているし、体内にはAI、医療、通信、身体のコントロールと何でも出来てしまう軍用ナノマシンであるナノムが入っているしで、オークのようなモンスターも初見で余裕で倒してしまいます。
そうして、お約束のように途中でモンスターに襲われていたお姫様であるクレリアを助け、旅を共にして行きます。
この世界では何らかの生体エネルギーを用いた魔法が存在していましたが、アランはそれを体内のナノムに解析させて、あっさりと自分でも使えるようにしてしまいました。
ここはちょっと簡単すぎますが、うさんくさくても説明がなされているというのはSFの掟を守っていますかね。
かなり優秀なAIが実用化されていても、あくまでも人間の指示が必要という制約も意図的ですね。
なお航宙艦のAIであるイーリスは良いキャラで、都合良く依頼をすることができる神様のようなポジションなので、壊れたことにせずに無事に残したのは正解だと思います。
未開の惑星に同じような人類がいたことも、誰かにより同じ遺伝子構造をもつ種が宇宙にばらまかれたからというスペースオペラでいかにもな説明がなされていますね。
ただ地球の数千年後の未来の人物が、現代のドライヤーや蒸留器を把握しているのはちょっとおかしい気はしました。もっと進んだ代替技術がありそうでしょうに。
艦に保管されていた英雄イーリスの細胞から作られたクローンのセリーナとシャロンが登場してからは、アランの無自覚ハーレム要素も加わって来ますし、クエストをこなして仲間を増やしてレベルアップしていくのはいかにもな流れです。
そうして4巻になると、クレリアは謀反で国を追われたお姫様だったので乗っ取られた国の奪還を望み、アランは数百年後のある目的のためにこの星の文明を急速に進化させようと新たに国を興すことを決め、このお話における主目的も定まるのでした。
ただ実はこの作品の原作は、小説家になろうのサイトで2年前に途中で更新が止まっています(この状態を「エタる」というそうですね)
なのであと少しで必然的にコミカライズも終了となってしまうのは残念です。やっと話が本格的に始まりかけたところとなのですが。
設定は準備したけど主人公が壮大な目的を掲げてしまったためにストーリーを紡ぐのが難しくなったのでしょうか。いずれ、あれから100年後からとかで再開されるかもしれませんね。
SFも異世界もどちらも好きだという方
ストーリーが途中で完結せずに終わっても耐えられる方に
最新刊
最新刊の6巻では、ドラゴンを倒し、計画通り貴族として男爵の地位を得られそうになりと、技術に裏付けられたチートな力で着々と前に進みます。しかし、ここに来て不思議な現象が突然描写されました。クレリアの姿をして、まるで彼の行動の意図を知っているかのような物言いの存在が登場します。
この世界ではAIであるイーリスが神の立場にいると思っていたのですが、アランもイーリスも把握していない別の存在がいるというのは、どうなって行くのかと思ったら、この先で原作の更新が止まっているみたいですね。そしてどうも原作を確認してみると、この存在についての描写は無いようです。コミカライズのオリジナル要素として、どういう方向に進むのでしょうか。
同時期に発売された2023年1月の新刊はこちら