歩は高校でも中学と同じ剣道部に入るつもりでいましたが、新入生の部活勧誘の場でうるしに出逢い、ビビッときてしまったので、全く将棋を知らない状態でうるし独りしかいなかった将棋部に入部します。ただし告白するのはセンパイに将棋で平手で勝った時と心に誓っています。剣道で培った武士道精神からそこは譲れません。
レビュー&感想
『からかい上手の高木さん』と同じ山本崇一朗氏の作品で、あちらが中学生のラブコメなら、こちらは高校生のラブコメです。高校生なので各キャラの恋愛に対する気持ちがちょっと強めですかね。また男女の攻守は逆になっています。
用意された場は将棋部ということで、各話の最後にはその話の中で出てきた対局の棋譜が載っています。将棋漫画としては『3月のライオン』がありますが、こちらは高校の部活ですし、そこまでガチな将棋ではなくあくまでもラブコメ主体です。なにせ最新11巻にして、まだ他校との対局などに到達しておらず、お話は学内にとどまっています。
歩はうるしにまだ将棋の平手で勝てていないので告白はしませんが、守りを徹底しながら隙をみて攻めに転じるという剣道の時と同じスタイルで、何を言われようと自分の本心は隠し通し、ここだという時でクリティカルな一言をうるしに浴びせます。歩は武道に秀でたイケメンという感じで描かれているので攻撃力はとても高く、やられたうるしの赤面した顔がとても可愛いです。
うるしがわずかな反撃として「おまえ私のこと好きだろう」と言っても、歩はさすがに守りが強くポーカーフェイスで何食わぬ顔をします。とはいえ、うるしは部員が4人揃って本当の部になることを望んでいるので、歩にすれば新しい部員が入ってしまうと二人きり将棋が指せなくなって困って焦ることはあるようです。
うるしの友人であるおせっかいというか気の利くマキは、サブキャラとして常々うるしの恋心を煽るのがとてもいいです。とくに垂れ目キャラなのはポイントが高い!また中学時代に歩と一緒に剣道部だったタケルとその彼女の桜子の進展具合も、なかなか進まないうるしと歩の関係を補完するようで良い感じです。
6巻からは学年が一つ上がり、歩とタケルの中学時代のやはり剣道部の後輩である凜が入部することで将棋部はついに本当の部に昇格します。実は凜も歩と同じ誓いをしていたことで、物語はちょっとずつある方向にむかって進み始め、そしてついに8巻ではマキの後押しもあって1巻分を丸々使ってうるしに画期的な変化が生じるのが描かれます。
この作者は、実は好き同士だけどまだはっきり出来ない微妙な関係の距離感の描写が上手いですよね。匂わせるだけで終わらずに、ついに形になってしまうのかはこの先が楽しみです。
そうそう9巻で初登場の目が細いのんきなお母さんも個人的には最高です。
将棋部でラブコメというありそうでなかったジャンルが気になる方に。
もちろん、こんな青春が送りたかったと遠い目をしてしまうあなたにも。