売れないバンドマンであった和(なごむ)は、メンバ全員に辞められて解散となったこともあり実家の京都の和菓子屋である「緑松」に10年ぶりに戻ります。しかし、実家には自分が跡継ぎだと名乗る小学生の女の子の一果がいました。 別れたはずの彼女が京都に来たり、女子高生に慕われたりと、落ち着かない中でも独特の雰囲気で和菓子と向き合い直す和に、いつの間にか一果も馴染んでいきます。
レビュー&感想
和菓子と京都、そしてそれらと深く結びつく四季折々を題材にお話が作られています。和は粗忽者ではあるものの人の心が分かる優しさを持つ(注:女心を除く)というキャラ付けで、トラブルを起こしながらもなんとか上手くまとめていくという話が多いでしょうか。
序盤では、両親と離れて暮らすしっかり者の少女である一果となかなか打ち解けませんが、小学生と比較すれば、アラサーはさすがに大人の余裕も持っていますので、なんとかやっていけるようになります。
一果はボケ役である和へのツッコミ担当として主に機能していますね。また、京都まで追いかけて来てしまった和の元カノの佳乃子と和に片想い中の美弦のどちらの気持ちにも気づいているため、のほほんとした和とこれら女性二人との三角関係を際立たせるための存在としても上手く使われています。
特に後者では、3人が一緒にいるところを見つけて独りで慌ててみたり、バレンタインデーのイベント等で、どちらの女性も頑張ってみたけれど、姪っ子に近いようなポジションの一果には勝てなかったという表現をされていたりです。
誰かと誰かのわだかまりを食べ物で解決するのはグルメ漫画の定番ですが、元は些細な行き違いがというパターンも多いので、劇的な解決という感じよりも、ほっこり解決という印象ですが、それはそれでこの漫画に合っているような感じがします。
京都の和菓子店によく飾られているという饅頭食い人形のエピソードは、遙か昔に自分がそれを答えさせられる立場になったこともあったので記憶に残りました。
咲季の女装癖が当初の逃げから今や趣味になって来ているのも、ドタバタ劇の良いアクセントになっていますね。
和菓子と京都という純和風のテーマだからなのか、全体的にゆったりとした時間が流れているような作風だと感じます。本作の主題の一つであった一果の父親の件が片付くのは10巻目で、一果の小学校卒業直前になります。
時期的にはちょうど良いタイミングと考えられていたのかもしれませんが、結構引っ張りましたね。あっ、このエピソードの最後のカットはなかなか良いですよ。
また和と佳乃子の関係もとてもゆっくりとで、当初の誤解は修復はされているけど前に進んでもないという状況で相当長い時間を過ごしています。読み返してみれば、第一話でプロポーズまがいの事を言いかけて破局しているくらいなのに。
中学生になった一果も、まだ両親とは別居で緑松に居るので完全解決には遠いのですが、最終的には色々と回り道をしたけれども、みんなが元の形に戻る話にしてくれるのだろうなと期待して読んでいます。
和菓子とか京都とか四季とか和風なものがお好きな方に。
娘とコミュニケーションを取りたくて、わざとボケてみるのが止められない方にも。
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引っ張り続けている和と佳乃子の関係は、そろそろ決着を付けて欲しいですね。