特にそうは謳っていないのですが静岡のご当地漫画です。静岡県あるあるを扱っており、お茶、富士山、ご当地食材、方言、徳川家康、山梨県とのライバル関係等が定番ネタです。よくここまで続いているなとネタの豊富さに感心します。
レビュー&感想
都会で夢破れて静岡の実家に戻って再就職したりん子と、失言で左遷された雲春を中心にはしていますが、何をしている会社かは全く説明もなく、ひたすらご当地静岡の素晴らしさについて語る漫画です。支社(静岡)と東部営業所(富士/伊豆)、西部営業所(浜松)の三つの拠点があるという設定で、横に広い静岡は県内であっても無視できない文化の差があることもネタにします。
最初は静岡ネタではなく都会vs田舎あるあるネタで進んでいました。私もちょっと田舎育ちで、就職で都会に出て20年ほど暮らして、現在はかなり田舎に転居して車社会の土地に住んでいる人間なので、都会と田舎の差は実感として分かって面白かったです。本当に田舎って電車は短いし、中学校を基準にして土地や人を語るんですよ。
お話がある程度進んだらもう静岡一色です。観光地としても名高い場所が色々ある静岡県なので、私も富士山、伊豆、浜名湖には行ったことがあり全く見知らぬ県ではないのですが、毎回へーそうなんだと楽しめています。漫画として面白くするための誇張ではあるのでしょうが、静岡では県に縦に流れる川の流域沿いで文化が違うそうで、二つある政令指定都市の静岡と浜松の差も大きければ、ほぼ関東扱いの伊豆もまた独自文化圏なのだとか。
特に富士山をその県境に抱える山梨との確執は強いそうで、富士山頂はどちらのものかについては曖昧なままらしいですね。不確定というよりもどちらにも主張があるということらしいです。富士山を至上の存在として崇める水馬のような富士山過激派という人種が本当にいそうなところも楽しいです。
この辺りの地域毎の文化の差を取り上げるご当地漫画としては、各都道府県を擬人化した『うちのトコでは』も面白い漫画です。この漫画のおかげでうちの娘は地理が得意になりましたのでおすすめです。『お前はまだグンマを知らない』とか『翔んで埼玉』(今は単行本が出てますね) とか、お隣の都道府県との確執はおそらくどこにでもあって、どっちがより酷いかを争うのは定番のネタですね。
お堅い主人公をからかうように使っての蘭子ママによる委員長喫茶企画も個人的には大好きで、特にタイプの異なる副委員長の二人を想定した案には100票くらい入れたいほどなのですが、色恋が全く進まないのも日常系漫画として価値を保っていて良いですね。でも穂垂主任と小畑君くらいはくっつけてあげたいかな。秋津さんは面白いのでどうかそのままで。
静岡についてより深く知りたい方に。
地元愛が深く、酒の肴でいくらでも語れるよねという方にも。
作者の方が、この作品についてNHKでインタビューを受けていますね。
最新刊
参照作品
『うちのトコでは (Amazon)』
『お前はまだグンマを知らない (Amazon)』
『翔んで埼玉 (Amazon)』
『翔んで埼玉』は映画で有名になりましたが、ごく短い原作の趣旨を見事に昇華させていて映画としてとても良い出来なのでおすすめです。妻は一時期埼玉に住んでいたことがあるので大爆笑してました。