渚は半年前の仕事が上手く行かなかった雨の日にペットを拾いました。昔からよく知っていた大型犬です。口いっぱいに頬張りながら驚くほどの量のご飯を食べます。仕事は長距離トラックドライバーです。美味しそうに食べる姿を見ながら「一緒にご飯食べられるっていいね」と、いつも思っています。
レビュー&感想
やや早めの仕事帰りに住宅街を歩いていると、晩ご飯の匂いがしてくることありますね。焼き魚かな、唐揚げかな、カレーかなと。その匂いはある意味幸せの象徴だったりするというのは、確かにそう思います。
帰宅してもどうせ独りなのが分かっていると、それはよりいっそう寂しく感じます。一方で帰宅したら誰かがいてくれて自分もその匂いに包まれるという確信があれば、つい足早になって少しでも早くその居心地の良い場所に帰りたくなります。
渚の部屋で浩がいつのものように大食いをして腹が膨れた後で、渚が迎え入れてくれたから自分もそのような居心地の良い場の内側にいることが出来て安心すると思えた時、渚は、ここがあなたの帰る場所だからと言って浩の手に合鍵を渡すのでした。
なお、この時点では年齢差のある姉弟のような関係に過ぎません。もともとはお隣の父子家庭の子であった小学生の浩に、高校生だった渚の家族が時々ご飯を食べさせていた経験があっての再会から始まった関係のためです。まだ二十歳の浩が実家から足が遠のいていたことを知っての心遣いからでもあったでしょう。
とはいえ気心の知れた友人達と飲みながら「誰かと一緒だと箸が進むんだよね」という渚が漏らした言葉に象徴されるように、お互いに二人でいることの心地よさを再確認していきます。
家で作って食べるだけでなく、外に出かけて食事をしても、二人であれば味について意見交換もできますし、ご飯だけでなく一人だと踏み出しにくく、面倒なことでも二人一緒だと「やってみようと」思えます。
そうして3巻になって、浩が避けていた実家とのわだかまりを解決して自分の帰る場所について考え始めると同時に、お互いの関係が少し変わりそうな描写も出てきました。さて、ここからどう進んでいくのでしょう。
ここまでは日常系家庭料理漫画という流れでしたが、ラブコメに変わってしまうのかもしれません。それも良いような。ちょっともったいないような…
家庭料理にちょっと飢えている方の癒やしとして。
姉と弟のような二人のこの先が気になる方にも。
最新刊
全4刊で完結です。