魔術師ザガンは、闇のオークションに出品されていた美しいエルフを、いきなり超高額で落札。周りからはどんな魔術の生贄に使うのかと恐れられたが、本人にすれば単なる一目惚れだった…、という感じで始まる魔方陣を用いた魔術バトルがある世界の物語ですが、実態は、ヘタレな主人公と控えめな嫁の相思相愛なやりとりを眺めて(愛でて)喜ぶ観察型ラブコメと言って良いでしょう。
レビュー&感想
ネフィを自分の居城に連れ帰り、中を案内するのに手を繋いで頬を紅潮させ、一緒に夜を過ごし(もちろん何もできない)、手料理を作ってもらえることになったりと、おいしいシチュエーションが続きます。
しかしザガンはヘタレなので、これで良かったのかといちいち反省したり、本心ではないことを口にしてしまったりと、恋した少女を前に黒歴史をどんどん積み重ねます。
一方、最初の時点ではネフィは生贄として殺されるために人身売買されたと思っているので、素っ気ないのですが、目の前で盗賊に襲われた馬車を助けたるのを見たり、メイド服を買ってもらったりして、少しずつ心を開いていきます。
ちなみにこの世界では、魔術師というのはかなりの悪党、人の痛みなど気にしないヤクザよりももっと酷いような存在として描かれているようですが、街で可愛いエルフを連れ歩き、大切にしていることが分かることで、ザガンを見る人の目も少し変わっていきます。
酒場で食事をしている時に、恥じらいながらお互いに食べさせ合うところは、最初の愛でポイントです。それをニヤニヤしながら眺める酒場の客に強く共感できるに違いありません。
2巻になると、膝上抱っこでの「あ~ん」とか、一緒に寝ましょう(もちろん勘違い)と言われてからの膝枕とか、鑑賞すべきメシウマなシーンも増えてきますが、実は二人には、お互いに共感できる子供時代の不幸な記憶があったことが明かされ、それもまた二人を引きつけ合う要素として描かれていきます。
最初のストーリーとしては、この二人の関係に、魔術師と対立する教会の聖騎士長「聖剣の乙女」シャスティル、魔術師仲間(?)のバルバロスが絡みながら話が進みます。
そして魔王達の末席に迎え入れられても不器用なままのザガンと、彼に必要とされる喜びに気づいたネフィが、危機を乗りこえ、お互いの気持ちを確かめ合って「奴隷でも、使用人でも、弟子でもない、そういう関係(好きと口に出せない)」になるまでが描かれます。
なお、実はポンコツなシャスティルと、しょうがねぇなぁと言いつつそれを見守る実はいいやつバルバロスも、いつの間にか脇役同士でいい雰囲気を醸し出しており、この二人の関係を描いたスピンオフ作品も作られています。ついにコミックスとして発売もされましたね。
こちらにも愛でる良さをご存じの修道女見習いのレイチェルが登場で楽しいですw
3巻の終わりからは第二章が始まり、ウォルフォレ(フォル)、ラーファエル等の新キャラが参加してきます。それぞれ、とてもいい立ち位置を占める脇役ですが、それぞれ(見た目の)年齢的に主人公の二人とは離れているので、二人のいちゃラブを邪魔するようなシーンは生まれず、引き続き安心して二人の関係を愛でられますよ。
また5巻の後半からは黒エルフのネフテロスと別の魔王であるビフロンスが登場し、そこに他の魔術師達も絡んでくる波乱の第三章になります。
8巻からは、かつてネフィが軟禁されていたエルフの村を舞台として、ネフィの過去にせまる新しい章が始まりました。
ぴくぴくと動いて感情を表すエルフ達の長い耳の可愛さに共感できる方に。
もどかしくも甘い二人をニヤニヤ眺めるのが好きな方にもおすすめです。