「今のスター・トレックで失われたものがここにある!」そう言いたくなってしまうSFコメディドラマがDisney+で配信されています。スター・トレックのパロディと言えば、2001年の映画の『ギャラクシー・クエスト』がありますが、これは2017年から放映されている最新のTVドラマです。描かれる全てのシーンで、元となるスター・トレックの名シーンが浮かぶような超オマージュな作りで最高です。
第1話 古傷 ”OLD WOUNDS”
時は2418年で、25世紀ですからTOS(カーク船長のオリジナルスター・トレック)より150年、TNG(ピカード艦長のThe Next Generation)よりは50年ほど後に時代設定を置いています。もちろん全く異なる時間軸ですが。未来の地球にも自由の女神像とブルックリン橋は存在しています。
一人乗りのエアカーのようなもので自宅に戻る主人公のエド・マーサー。いきなり妻のケリーの浮気現場に遭遇! どうやらこれで二人は破局してしまったようです。色恋沙汰の多かったカーク船長を裏返したようにして始まります。
それからは勤務態度も怠惰になってしまったエド。冒頭から1年後に最後のチャンスとして探査艦のUSSオーヴィルの艦長を任されます。副長が遅れて着任するのはTNG第1話のライカーですね。
この辺りの映像にキャストを示す文字列が重なって流れますが、このフォントも雰囲気が完璧です。
入ったらホロデッキであることがバレバレな表現がされて操舵士になるゴードンを迎えに行きます。日本の戦国時代の様相で鬼と戦うとか面白そうなプログラムで、しかも敵のホロキャラがにこやかに挨拶とか楽しいです。武士を好むのはスールーへのオマージュでしょうか。
ゴードンが無茶な運転をするシャトルでドックに係留されているUSSオーヴィルに近づきますが、別の艦の影から対象の艦が浮かびがるように現れるのはスター・トレックの映画のワンシーンそのものですよ!艦番号はECV-197です。
艦の形もエンタープライズ号が宇宙を翔るスワンと言われたのと同じように、重力下で発想されるような単純構造には囚われていない特徴的な形のエンジンナセルを持っているのがまた良いです。シャトルベイはお尻にありますしね。
乗員をホールに集めての艦長の演説。これもそれっぽくて素晴らしいです。ここで紹介されるメインキャストは以下になります。
警備主任 アララ・キタン大尉 (セレア星人)
航海士 ジョン・ラマー大尉
次席士官 ボータス少佐 (モクラン星人、副長の次の権限者)
医療主任 Dr. クレア・フィン
科学士官 アイザック(ケイロン星産のアンドロイド?)
胸にはコマンドとかエンジニアリングとかメディカルとかのそれぞれのセクションのマークもあって、細かい作り込みが嬉しいです。
最初の任務はエプシロン2への物資の輸送です。艦が出航する所での室内の大きな窓から見えるカットや見送る宇宙服を着た作業者。そしてブリッジを仰いでから流れて行く艦の背中!
やっぱり分かっている人が作ると違うなぁと感嘆しきりです。スター・トレックが好きな方は、これだけでも視る価値があります。
そして待っていた副長は、…冒頭で浮気していた離婚した妻でした!ってこの人よく見たら、マーベルのスピンオフドラマの『エージェント・オブ・シールド』に出ていた人じゃあないですか。喧嘩する夫婦に当たり役なのかな。
サイエンスラボに行くと特別な研究成果があって事件が起きるとか、もういかにもですよ。でもさすがに転送はしませんね。あまり似せてもなのか、それとも技術考証から無理ありとの判断でしょうか。
単独で100年成長できるアカスギの種という分かり易い伏線が先に用意されますが、クマムシとか『ディスカバリー』を匂わせたようにも思われます。
ワープも量子ドライブと言われてましたし、そして今回の量子フィールド内での時間を加速する装置、量子フィールドの制御技術がこの世界のベースですかね。
コミュニケータは手に持つタイプでTOSと同じですね。銃はなんて呼ぶのかな?
突然のピンチでCM用のブラックアウトへ、そしてパッと出のキャラクターが死んでと、お約束が続きます。どうやらこの世界での敵はクリルという種族のようです。形は違いますが緑色でより大きい敵艦はロミュランを想像させます。
ピザパーティじゃないの繰り返しは”This is not a drill.”のギャグですかね。ドクターがトライコーダのようなもので遺体を確認して”She’s dead.”の台詞ですよ。
クリル人は全身アーマーを着用してますが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のピーターのように耳辺りのスイッチでヘルメットを外すと素顔は『ディスカバリー』でのクリンゴンのような感じです。
艦対艦戦では、ゴードンがめちゃくちゃなマニューバを魅せますが、そこで慣性制御が間に合わずに体が傾いて足を踏ん張る乗員達w
実際、艦対艦レベルでこんな近距離で打ち合うなんてことはあり得ないはずですが、そこは映像的表現的に仕方なしと。
一方、上陸部隊の銃撃戦では、もちろん相手の弾は一つも当たらずに、アララのスーパーパワーでシャトルまで逃げ切ります。皆さん、ちゃんと手でシートベルト締めたので、そのあと忍び込んでいたクリル人の撃退にも成功します。
なんとか艦に戻れてもエンジンは2つやられて残り1つ。逃げることも出来ずに、クリル人から研究成果を渡すように求められます。離婚ネタの(元)夫婦喧嘩で時間稼ぎをするエドとケリー。逆転の手を思いつきました。
グルーガン(接着剤を付ける道具ですが現代と同じものじゃん!)でアカスギの種を時間を加速する装置にくっつけ、敵にシャトルで送ります。やっぱり転送技術は無い前提ですね。
そして敵艦内でアカスギが100年分爆発的に成長すれば敵艦を中から突き破ります。っていやいや多少の内装はともかく、戦闘もする宇宙艦の外部構造が木に負けて良いんかな? まぁコメディなんで。宇宙区間に浮かぶ巨大な木と壊れた宇宙船。映像的にもとてもシュールで面白いです。
そして無事に基地に帰還。エドは艦を救ったケリーが副官としてオーヴィルに乗艦し続けることを許しました。
シーンは変わって基地の提督の部屋になります。ケリーが入ってきます。実はエドを艦長に推したのはケリーでした。ケリーの父親と提督が知り合いとかもいかにもでGoodです。
ケリーが提督に礼を述べて部屋を出て、提督が端末に向き直るカットの上にクレジットが入って第1話は終わります。
控えめに言って最高!です。主人公のエドを演じるセス・マクファーレンは製作側にも深く関わっていて、やっぱり元作品が大好きな人が趣味丸出しで作ると素晴らしいです。各キャラの特性も描かれてシリーズ第1話としても良いスタートですね。