あまり強くは無さそうなプロ野球チーム「モーターサンズ」。その本拠地であるモーターサンズスタジアムで、ルリコはビールの売り子を始めました。まったりと野球観戦を楽しむサラリーマンのムラタにビールを押し売りして初めての常連さんにし、今日も明るく元気にビールを売り歩きます。そしてスタジアムにはそこに集う人達が織り成す沢山の情景があるのでした。
レビュー&感想
この漫画を最初に読んだ時は、しばらくどういう漫画なのか分からなかったのですが、これは日常系の漫画でした。一見、非日常なイベントに見える野球観戦について、スタジアムの側から見た日常風景を描写した、その視点があったかという作品です。タイトルはもちろん英文も含めて『ライ麦畑でつかまえて』のもじりです。
作中の2巻でも表現されていますが、スタジアムと言えば、下から上がっていってコンクリートの通路や階段を抜けて視界が一気に広がる感じが良いですよね。まさに自分が普段過ごしている場所とは別世界って雰囲気で。まさにサード・プレイスですよね。
出てくる人物像としては、まずは観戦者の代表としての疲れたサラリーマンに、野球好きの親父達、家族連れ、出場選手の関係者がいます。そして見せるチームの側としての選手は言うまでもなく、監督、審判、チームの広報、警備員、売店の店員、ウグイス嬢、そしてビールの売り子さんがいてと、スタジアムでの野球の試合開催にまつわる様々な人が登場します。
ちゃんと(?)野球の試合のシーンもあるのですが、スポーツ漫画ではないので試合の展開を一つずつ追うようなことは無く、盛り上がっているシーンとか、いきなりクライマックスシリーズ出場をかけた試合とか、いいとこ取りがなされています。あとちょっとだった良い試合で思わず涙とか、スポーツ漫画としては定番で外せないですからね。
お話の中心キャラはムラタにビールを押し売りするルリコをはじめとしたユウヒビールの売り子達です。売り子さんの背中に担いでいるビール樽は20kg近くもあって、急な階段を登り降りしながら平均で100杯くらいを売るのだとか。ミニスカートの可愛い女の子が動き回っているカットが多いのはなかなか上手いところを狙っているなと思います。
とはいえルリコ達以外のキャラがメインのお話も沢山あって、スタジアムに集った属性の違う色々な人物が、それぞれのお話でちょっとずつ絡んでいるというのは、あの人がここでみたいな群像劇的な楽しみがあります。
ちょっとした恋愛模様もあるのですが、そこは選手とその奥さん、選手とその彼女、選手とウグイス嬢に、選手と審判(もちろん女性)とか、もちろん一推し選手を持つファンも、と選手がらみで描かれているのが多いですかね。この中では特に年上ウグイス嬢の佐藤さんと甘いマスクの鋸山選手とを、ちゃんとこの先で進展させて欲しいです。
気づくと、ビールの売り子さんと選手の関係はあまり描かれていませんね。外人選手のデニスがルリコを遠目から気に入っているくらいでしょうか。確かに実際の接点は少なそうですね。
チアの予告みたいな回もありましたし本物のスタジアムでは定番ですので、いずれは登場となるかもしれません。スタジアムの運営という視点で見ると意外とお仕事漫画でもあるのかなと思います。是非このままな感じで、実はこんな仕事や苦労もあってというように、この特定の楽しい場所におけるお話を広げて&深めて行って欲しいですね。
そうそう個人的には、ルリコにまとわりつくちびっ子達が可愛くてお気に入りです。
身近にある、ちょっとした非日常の空間が好きな方に。
もちろん推しのスポーツチームがある方には言うまでも無く。