ながたんと青と ーいちかの料理帖ー【漫画レビュー】

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『ながたん』は包丁で『青と』は青唐辛子。どちらも漫画の舞台になっている京都の方言だそうです。ということは漫画の中の配役からすると、妻が包丁の側なので夫はまな板の上で切られてしまうがな!とはならず、とても良いコンビで二百年の歴史を持ちながら経営が傾いてしまった料亭を再興して行きます。

書籍情報

漫画:磯谷友紀
出版:講談社
ジャンル:グルメ、家族、料亭経営
既刊:11巻
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主要登場人物 

桑乃木 いち日(いちか) 妻、料亭「桑乃木」の料理長
木 周(あまね)   15歳差の夫、経営者(プロデューサー)役

レビュー&感想

舞台設定は戦後間もない1950年代です。歴史で習った『もはや戦後ではない』は1956年の経済白書だそうですから、まだ日本の景気が復興需要に支えられている途中くらいの時期でしょうか。

令和になってからは「昭和か!」という平成を越えて二時代前の価値観を揶揄する表現も多いですが、昭和生まれの私としても、この時代はまだこんな価値観だったんだなと学びになりました。

結婚観で言えば、最近流行の令嬢が主人公の漫画でも家のために結婚するのは当然という話は多いですが、そこにあらがうのか、それとも一緒にいることで育んでいくのかは多くは女性に求められる選択です。この作品では妹のふた葉はあらがい、姉のいち日は受け入れるという選択をしています。

また職業観の古さでは、主人公のいち日が、まだ女性が料理長を務めるようなことが受け入れられていない時代の偏見とも闘います。好きな料理を極めて実家の古い料亭を立て直して行きながら、女性が15歳も上の年上婚&政略結婚というところも作品の良いスパイスになっています。(上手く言ったつもりでした。すみません。)

15歳差は年数だけでは無く大正生まれと昭和生まれの差でもあります。夫の周はどちらかというと新しい価値観の持ち主で、古い料亭を盛り返していくにも最初はいち日の方が及び腰です。周には政略結婚をさせられたホテル経営をしている実家との確執もありましたので、店の再興には積極的でした。

始まってからしばらくは偏見への挑戦が主題になっています。しかし周のアイディア、そして舞妓さんや女性記者など仕事をして活躍する女性に支えられながら、新しい時代の象徴として受け入れられ店を軌道に乗せることに成功します。

なお作中で出てくる料理は「いちかの料理帖」の副題の通り、作り方が丁寧に紹介されています。最近はもう読んでいないのですが『クッキングパパ』のような感じですね。お酒のおつまみやお菓子もよく出てきます。

いち日のおとなしめな性格と再婚&年上であるがゆえに、悩みながらも一歩引いてしまう恋心の表現は好ましいですね。ただ7年前に2ヶ月だけの結婚生活だった夫と死別というと、初婚の時でも28歳くらいなので、昭和初期の価値観で見ても遅そうですが、戦争の影響もあったとされているのかもしれません。

脇を固めるキャラクターとしては、伯母の丸川と妹のふた葉が良い味を出してます。たとえが失礼かもしれませんが、いかにも関西っぽいの押しの強い女性として、おとなしめの主人公には無い部分を上手く演じ分けさせていると思います。癒やし役としても、養子のよく食べる小学生、周のかつての想い人の赤ちゃんと登場してきていますが、そのうちに妹のふた葉の子供も出てきそうです。

料亭が軌道に乗ってからは主軸も路線変更をして、時代の偏見との闘いから周の実家である山口家との関わりが中心になってきます。桑乃木の土地を取ろうと画策している長兄の縁との静かな戦いや、周の幼なじみで縁の妻の鈴音への軽い嫉妬など。

そしてそれと共にいち日と周の関係もかなり変化してきて、当初は仕事の関係が主であった二人が今や両想いかなという良いものなってきます。

同じ目標を持った男女が一緒にいれば、どんどん仲良くなっていってしまうのは当然ですが、やっぱり漫画として次々とトラブルがやってくるので、そこをどう乗りこえて行って、ふたりの関係が最終的にどう落ち着くのかが楽しみです。

おすすめ!

もちろん料理が好きな方と
控えめな男女の抑えた恋心をじんわりと味わいたい方に

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参照作品

クッキングパパ (Amazon)