岡山県の7人組の地下アイドルCham jamと、そのメンバーを推すドルオタ達との二つの世界の汗と涙の物語です。腐女子もそうなんですが、自分が生態を知らないオタの世界を知るのはとても面白いです。様々な用語も学べます。もちろん漫画として極端な誇張が入っているのは分かった上で楽しんでいますが、そこにはドルオタとして守るべき生き方とかがきちんと根底にあって、そこを壊さずに描いているのがイイですね。
レビュー&感想
(まだ)売れていないCham jamは衣装も微妙でファンも少ないローカルアイドルの設定ですが、もちろん漫画的には全員がとーっても可愛く描かれているので、何故これで売れていないのか不思議な感じです。アイドルグループ成長物語の初期編と捉えれば良いのかも知れません。
メンバー7人の性格分けも上手くなされています。最年長でしっかりリーダーの「れお」、ボーイッシュでクールな「空音」、顔良しスタイル良しの「眞妃」、ダンスが上手くて眞妃推しの「ゆめ莉(夢)」、空気を読まない面白キャラの「優佳」、明るく活動的なチビキャラメイドの「文」、シャイで言いたいことも言えない「舞菜」となっています。
どの子も可愛いのですが、一人推せと言われるならば、MCで毒を吐いたりして、変な被りものが好きな優佳が漫画的に面白いキャラなのでイイです。うーん、でもあーやも捨てがたい。
Cham jamは地下アイドルなので、グッズを買って握手券を手に入れて直接話すことも出来ます。この時にアイドル側から自分を好きでいてくれるようにファンに媚びを売る(もちろんグッズも売る)のを「釣る」と言うそうですが、メンバーそれぞれの釣り方が秀逸で、これはオタ達が堕ちるのも納得です。さらに相手を識別した上で特定のポーズをする「固定レス」をもらえたら最高ですね。
始まった頃の話としては、グループで一番人気の無い舞菜を推すえりぴよのドルオタあるあるの極端な滑稽さを楽しむ感じですが、話が続くに従ってアイドル達側の視点になって活動における目標や悩み、他のアイドルグループとの交流などもあって、芸能活動をするアイドル側とそれをひたすらに推すドルオタ側の二つの世界が描かれます。
この二つの世界は、当然ステージや特典会(交流イベント)とかで交わるのですが、あくまでもそこには一線が引かれているという感じが上手いですね。アイドルとファンが簡単にくっついてしまうというような三流な話にはなっていませんし、この先もならなさそうで世界観を上手く維持しています。
ドルオタ達は同じアイドルは推している横の繋がりもあれば、推しメンは異なって深い溝もあるで、推し方も人それぞれ。でも収入と生活時間の大部分をつぎ込んで、イベント日に休みを取るためにフリーターでいるというトップオタとしての極端なクズっぷりが漫画的にはとても面白いです。
れお推しのくまささんは単体で描かれるといかにもなオタな感じのかなりヤバイ風貌(1巻頃まではもっと普通だった)ですが、さらに一段上の変人のえりぴよと一緒にいると意外とまともで良い人に見えます。オタ側にえりぴよという変人だけど若い女性を配置したのは、一見マイナスイメージのオタ側を和らげる上手い設定だと思いますね。
Cham jamは、YouTubeのチャンネル登録者数が370人とかヤバすぎる知名度ですが、より売れているグループと対バン(共演)したり、YouTubeでコラボしたり、ローカルTVに出してもらったりして、少しずつだけど武道館に近づいている?のかもしれません。
これまでの自分の人生ではアイドルにはまった時期は無いのですが、アイドルも悪くないんじゃ無いかと思わせてくれる、ドルオタでは無い人にも新しい扉を開いてくれる漫画ですよ。
可愛い女の子に思わず堕とされてみたい方。
推しジャンルは違ってもオタとしての喜怒哀楽に深く共感できる方に。
最新刊
参考情報
2020年にTVアニメにもなっています。実はそのOPテーマであるキャラソンの『Clover wish』をたまたま聴いて良い曲だなと思ってから、この原作漫画を知ったのでした。