一番最初はハッピーエンドとなる幸せなシーンから始まって回想のように過去に戻りますので、実家で相当に虐げられていたマリーが幸せを掴むまでのシンデレラストーリーであることは間違い無いです。とはいえ当初の主人公の思考をここまで卑屈に描いているストーリーもなかなか無いですね。でもその分だけマリーの気持ちの変化をとても丁寧に描いているのはいいなぁと思います。
レビュー&感想
継続中のストーリーなので理由はまだ語られていないのですが、マリーは実家の男爵家において姉に比べてとてもとても酷い扱いをされていました。そんな中で異国の血を持つ伯爵のキュロスから姉への求婚がありますが、姉は嫁ぐ途中でなんと事故死してしまいます。そのためマリーはその姉の代わりにキュロスの元へと送られたのでした。
冒頭に述べたようにシンデレラストーリーと想定されるのですが、主人公が婚約者の愛を理解するまでには、かなり長い時間を必要としています。普通は数話程度で新しい環境に馴染んで、イケメンの婚約者にいくらか愛をささやかれたら後はお幸せにという感じですが、マリーが愛されていることを実感するまでに、丸々3巻分を使って引っ張っています。
一つは実家で自分が虐げられていたのは可愛くないからという理由があったのだという思い込みで。もう一つはキュロスにとっても所詮は政略結婚なのだからという思考停止で、この二つがマリーの心の壁を強固にしてしまっていました。
しかし前者には正当な理由など無かったことに気づくようになり、後者では先に城の使用人達やキュロスの母であるリュー・リューと家族のように仲良くなれたことで、マリーを大切にしたいと思っているキュロスの本心も理解することができるようになっていきます。
キュロスの側もマリーの心の壁を分かった上で余計に気にしすぎていたので、一歩引いてしまっている面もありました。それにとにかく女性が喜ぶことをしてあげればよいのだろうというような、一方的な考えを持ってしまっていたのも誤解を解くのが遅れた理由でした。
ただ、非の打ち所も無いイケメン好男子を設定して闇雲に甘い愛を囁かせるだけよりは好感が持てる設定ですね。またちゃんと侍従頭のミオを使って、マリーが迫害されていた理由を探して根本的な解決を計ろうとするところはイイ男です。
毎回クドいですが有能懐刀キャラ好きな私の一推しはもちろんミオです。2話目の冒頭でいきなり男爵を投げ飛ばすところからのマリーに気づいて、ページ半分を使っての驚きの顔はイイですw
この手のキャラ立ちのポイントは、主人を敬愛しつつ同時にその主人を相手に容赦ない言動をするところですよね。もちろんそれは主人を想うがゆえの親密度を表しているわけですが。
おそらく最後のハッピーエンドに向かう中で、マリーが虐待されていた理由が明かされるのだと思われますが、そこで読者に納得の行く説明がなされるかはこの作品のポイントですね。姉のアナスタジアも冒頭である趣味を生かした仕事をしたいとマリーに説明するシーンがありましたので、そこが関係しているのかも気になります。
卑屈で自身が無い女の子が、周囲の助けを得て幸せになっていくイイ話が好きな方に。